永川優樹氏講演会を行いました

2016年1月23日に、「地方創生とPR動画」〜動画で地方を活性化できるのか?実例からみる課題と可能性〜と題した永川優樹氏の講演会をうきは市民センターで行いました。
ご当地PR動画の現状、また自らの体験を通じた動画についてのノウハウを惜しげもなくお話しいただきました。
永川優樹さんのお話は、以下のような内容でした。

□自治体PR動画戦国時代
・2015年、国は地方創生というテーマを掲げて、さまざまな施策を行った。私たち生活者の目につく所では、プレミアム商品券、移住促進、PR動画などが記憶に残っているのではないかと思う。
・ご当地PR動画が一般的になったのは、Yahoo!の「映像トピックス」というコーナー。ここでは2015年に話題になり、視聴が多かった動画のベスト100が総合ランキングになっているが、この中でも、ご当地PR動画は1つのジャンルとして確立している。
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・こういうPR動画は、テレビなどでは流さずに、ネットだけで公開して、ネットの口コミを利用して爆発的な現象、いわゆる“バズ”を起こして、ネットの中で話題にする。ネットの中で話題になったものがテレビでも取り上げられて、マスメディアでも紹介される、という手法を使っている。

□自治体PR動画の財源は税金
・自治体PR動画の予算は数千万円に上るものもある。源泉は「まち・ひと・しごと創生事業費」、いわゆる地方創生予算。1兆円を国が用立てて、それを各地方に補助金という形で交付している。もちろんPR動画だけではなくプレミアムクーポン券や、移住促進の施策なども含まれている。
・PR動画については、自治体は自分たちの予算は出さずに、ほぼ100%国が出す、いわゆる10割補助で実施されているケースがほとんどのようだ。

□PR動画の効果はあるのか?
・そうやってかなり高額な税金が投入されたPR動画が、どのくらい効果があったのかということが一番注目されるべきところだと思うが、これについては測りようがなく、わからない。
・PR動画で話題になったある市の場合、単にインバウンドや観光促進のためのPR動画ではなく、移住促進が目的だった。ところが面白いねと話題になった、というだけでは、そこにつながらない。移住したいなと思わせるためには全く別のコミュニケーションが必要になってくる。
・広告費換算だと数億円に相当するという言われ方もする。これはテレビで露出された時間や、新聞記事の面積を、もしこれだけのボリュームの広告を定価で打つ場合いくらかかるのかという計算をした額だということ。しかし露出が必ずしも効果的とも限らないため、これにはほとんど意味がない。

□話題をつくるというだけなら割と簡単
・話題にはなったが本来の目的が達成されたか疑問という意味では、民間の作った動画でも同様に、数百万回以上再生されているが、何のコマーシャルだったかわからない、というものが多く存在している。企業はとにかく話題性を求めているので、“バズらせる”ことを条件に入れたり、広告代理店も何とか話題にしないといけないということで無理をしがち。
・最近、民間の動画で話題になったものがあるが、これらには元ネタがあることが多い。もともとYouTubeの中ですでに人気のあるジャンルがあり、このテーマで撮れば必ず100万回は再生されるだろう、固いだろう、というようなものを利用している。

□誰も得をしていないPR動画の現状
・自治体は、その効果が明らかでないPR動画に数千万円という大きな予算を投入しているが、一方で消えていく民族芸能などについては何も対応していない。
・限界集落、消滅自治体という言葉が話題になっているが、何かのきっかけで再び人が集まり出した場合、その地域を地域たらしめていたような地域資源を復活させようと思っても、記録がなくてできなかったりする。形の残らない民族芸能などについては、記録資料を残すために少しでも予算を割くことを考えるべきではないだろうか。
・自分が関わった動画について、おかげで観光客が増えた、とお礼を言われた。しかし、本当に自分の動画が寄与したかどうかは疑わしい。また、費用対効果としてもどうなのか、反省を含めて疑問が残っている。
・受注業者が得していると思うかもしれないが、地方に人を出してかかりっきりになると、予算としては厳しい場合が多い。普通の業者から普通の広告発注を受けてこなしていた方が収益は高く、いわゆる骨折り損という状況。
・だれも得してない中で、損しているのは納税者。あまり過熱しないように、オリンピックスタジアムについて厳しい目で見ているように、見ていった方がいいのではないか。

□映像コンテンツによる地方活性化は可能か-軍艦島アーカイブスの事例から
・昨年関わった軍艦島アーカイブスというプロジェクトでは、こういう手法ならば本当の地域活性化につなげることができるかもしれないと感じた。西日本新聞に提案して採用された、軍艦島をドローンで4Kで撮って見せる、というプロジェクト。
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・少ない予算だったが、フェイスブックを通じて話題が広がり、メディアでも多く取り上げられた。またクラウドファンディングによって資金を集めることができ、ブルーレイの製作も可能になった。
・プロジェクトを通じて感じたことは、その中にあるストーリーを感じさせること、またファンとのコミュニケーションが大事だということ。

□浮羽の資産の活用
・浮羽の棚田まなび隊のプロジェクトの素晴らしいところは、見ていて「これは応援したいな」という気持ちが強く出てくる、ということ。また、棚田で米を作っているので、支援してくれる人にお米というお返しも同時にできる。軍艦島アーカイブスでやった枠組みに近い要素を兼ね備えているな、ということを感じた。
棚田まなび隊記録←クリック
・動画や、様々なコミュニケーションツールを賢く活用して、地域振興につなげてほしい。

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