萩野紀一郎先生の講演会を実施しました

7月15日に、萩野紀一郎先生の講演会をうきは市民センターで行いました。
萩野先生は、10年ほど前に能登半島に移住し、里山で暮らしながら新しいライフスタイルを求めて幅広く活動されている方です。
講演会にはたくさんの人が集まり、定員30名ほどの会場がすぐに満席になりました。
萩野先生のお話は、以下のような内容でした。

○能登に移り住んだ経緯
・大学卒業後に留学したアメリカで、古いものを当然のように大切にする習慣に触れ、帰国後には日本人の調和を重んじる良さに気付いた。
・日本らしい生活ができる場所を探していたときに能登を紹介され、訪れてみると風景の美しさに魅かれて毎年夏に通うようになった。
・40才を過ぎたころ、どこかに定住して自分で手を動かしながらものをつくる生活がしたいと思い、以前から通っていた能登に移り住むことを決めた。
・初めは仮住まいをして、地域と徐々に関係を築いていくことで、アトリエを借りたり自宅を建てる土地を購入したりすることができた。

○能登半島地震後の土蔵の修復
・地震をきっかけに輪島市の伝統的建築物の修理に関わるようになり、そこで輪島には土蔵がたくさん残っていることを知った。
・もともと貯蔵を目的とした土蔵ではなく、漆塗りの上塗り場であったため、あまり使われなくなっており、弱くなっていたところに地震が襲い、多くの土蔵が被害を受けた。
・半壊認定以上で解体撤去に全額補助が出ることから多くの土蔵が取り壊されていた。何とか残したいと考え、残せる例を示そうと、保存の要望があった3棟の修復を行った。
・さらに職人や学生たちと毎週ワークショップを行い、土蔵や古民家の修理・活用に取り組んでいる。
・説得して修復してもらった土蔵もあるが、どうしても解体されてしまうものもあり、材だけを保管しているものも数棟ある。移築利用した例も。
・継続的に活動することの難しさや、保存を試みても利活用が伴わないと実現が難しいことなど、多くの課題が見えた。

○「まるやま組」の活動
・ビオトープ建設をきっかけに行った植物いきもの調査を通して、色々な分野の人と一緒に里山を歩いたことで多様な価値観に気づき、さらに季節に応じて自然の恵みを無駄なく使いまわす農村の知恵に学びがあった。
・そこから土地に根差したことを学び合う場として「まるやま組」を結成し、月に一度、地域を学び合うワークショップを行っている。
・参加者は職種、年齢など多種多様。小学校の野外授業の取組みも行っている。
・自宅が交流の拠点となっており、いつもいろんな人がいる。
・ワークショップでは、食を通じて里山の今を知るための”オープンキッチン”を開催したり、地域の農耕儀礼をオリジナルな方法で伝承したりと、多岐にわたる活動を行っている。

萩野先生の、身近なものを掘り下げていく里山くらしのお話は、多くの参加者にとってこれからの農村の暮らしを考える上で示唆に富む内容であったと思います。
講演終了後には3名の参加者から世界農業遺産についてなどの質問が出されて意見交換が行われた後、盛大な拍手で会が締めくくられました。
萩野先生、どうもありがとうございました。

レポーター:佐々木悠理(九州大学菊地研究室)