棚田まなび隊2017 第12回活動日

稲刈り・掛け干し【9月24日(日)晴れ】

黄金色に色づき、穂を垂れる稲。
「ようできとう」と地域の方からお世辞でも言っていただき、稲刈りに臨む足も弾みます。今回は参加者20名ほどで、4枚の田んぼをほぼ1日かけて刈っていきいました。作業は機械を使わず、手刈りに掛け干し。田んぼの中にコンバインが入らないわけではないのですが、昔ながらのやり方を体験するのも、まなびのひとつです。

刈った稲はだいたい5株ずつ束ね、藁でくくります。くくるための藁は、地域の方がストックされていた昨年の稲わらを提供してもらいました。それを竹と木で作った「馬」にかけるまでが、一連の作業。

なんてことない作業のようですが、少しコツがあって、まず、稲わらは乾燥していると千切れるので、すこし水分を含ませた状態にしておくこと。また、稲わらは引っ張りに弱いため、結ぶのではなくねじることでうまれる摩擦力で締め込むこと。そして、ねじり方にも少しコツがあって、藁ではなく、イネの束を回すことで、きつく締めこむことができます。締め方が緩いとイネが乾燥して縮んだ時、ばらばらと落下してしまいます。

最初にベテラン隊員が全体レクチャーをし、細かいところは、他の経験のある隊員が所々教えることでカバー。初めて稲刈りをする隊員も少なくなかったようで、最初の1枚は「おー!」と感動の声が上がったり、わいわいおしゃべりをしていました。気づけば1枚刈るのに1時間。このままで果たして4枚終わるのか…?と心配したのも束の間。2枚目以降は手際もよくなり、何よりあと3枚、しかもより面積が大きな田んぼが残っているともなれば、作業スピードは自然にアップ。イモリやカエルやサワガニを捕まえて写真撮影タイム、なんてことも挟みつつ、無事作業を終えました。

ただ、今年復田した田んぼの作業は大変でした。田んぼの水平がとれていなかったのか、水がうまく抜けておらず、まだ泥が残る足場が悪い中での稲刈りとなりました。自由に動けないため、稲刈り組、くくり組、掛け干し組とわかれ、流れ作業スタイルでこの難関をクリア。それでも泥のなかにダイブしかけた隊員も数名おり、最後まで気が抜けませんでした。

この後、天日にさらした状態で、約10日間ほど実の水分が15~10%以下になるまで乾燥させます。そうすることで、長期保存ができるのです。機械が普及するまでは、稲刈り、掛け干し、脱穀、籾摺り、精米、とかなりの人手と時間がかかっていました。今では、コンバイン1つで稲刈り、脱穀、ができ、刈ったその日に精米所で乾燥・籾摺り・精米も済ませる機械乾燥が主流となっています。

また、掛け干しをすることで葉に残っている養分が全て実にゆきわたる、ともいわれています。これについては、科学的には証明されていないようですが、時間をかけるほど、新米を今か今かと待ちわびる気持ちが募るのは間違いありません。

かじわら(隊長代理)

 

棚田まなび隊2017 第11回活動日

畦の草刈り・雑草抜き・畑の収穫【8月27日(日)晴れ】

いよいよ、草取り作業もラストを迎えました。前回出穂していた稲穂もすでにこうべを垂れ、黄金色に変わっています。ですが、最後まで油断は禁物。そんな田んぼの間から、にょきっと頭を出しているヒエを発見。これまでの草取りで、取り除いてきたつもりでしたが、やはり見逃しがあったようです。ヒエはイネよりも高く背を伸ばし、田んぼの広範囲に種を落とします。そして土に混ざり冬を越し、来年の発芽の季節をじっと待つのです。蓋を開けてみると、田んぼに植えたイネよりもヒエが多いなんてことにもなりかねません。
ヒエが種を落とす前に、取り除くときもできるだけ種が落ちないように、丁寧に取り除いていきます。

今回は田んぼの草抜きに加えて、畦の草刈りを、いつも以上に丹念にやっていきます。というのも、つづら棚田では、毎年9月中旬頃に「彼岸花まつり」が実施されます。棚田の畔に彼岸花が連なる風景はとても幻想的。一年に数日しか見ることができない風景を一目見ようと多くの人が訪れ、地域はとても賑わいます。そんな晴れ舞台、彼岸花を雑草で隠すわけにはいきません。そんな訳で、彼岸花の芽がでる直前のこの時期を狙って、畔の草刈りを済ませてしまうというわけです。

午後、昼食を済ませ畑に向かうと、茄子とピーマンがまだ元気になっていました。そして、これからの楽しみは里芋。収穫祭の豚汁の具として欠かせません。茎が増え葉っぱが大きくなったら根元に土をかぶせ、増えたらまた土を被せ、といった具合に、芋を太らせていきます。

ひと通り作業が終わったあとは、川、集落の真ん中を流れる葛篭川で足を洗いつつしばし休憩。夏の暑い時期。川の冷たさがとても心地よく、洗い終えたあとも、そのまましばらく、他愛ないおしゃべりが続きます。

次回はいよいよ稲刈りです。

かじわら(隊長代理)

 

棚田まなび隊2017 第10回活動日

イネの出穂・トマトとメロンの収穫・スイカ割り【8月6日(日)雨のち曇り】

田植えから続く、毎回の草取り作業。大変ではあるのですが、やることは同じ。この日は強風が吹いていたこともあり、作業も早めに終わらせよう、といつもの調子で田んぼに出かけると、「わあ!」という歓声があがります。

そう、イネの穂が出ていたのです。茎を割って出穂し、約30分ほど、1回だけ花を咲かせ受粉、お米が実る準備が整うのです。
同じ除草作業でも、いつも以上にやる気が出てきます。

田んぼの中の草取りに加えて、畦の草刈りも重要。畦の雑草を放っておくと、そこから虫や病気がうつったり、日が当たりが悪くなったり、イノシシ除けに電気が通らなかったりなど、問題の発生源となります。もちろん見た目のよくありません。田んぼを数多く耕作されている地域の方は、毎日数枚ずつ、まんべんなく手入れが行き届くように、草刈りをされているのです。

畦の草刈りは刈払い機を使います。先端についた刃先で草を刈っていくのですが、ここが金属のものの他に、細い糸のようなものもあります。地面の草を刈るときは金属刃で構わないのですが、石垣など硬い場所で作業をするときは紐を使います。というのも、金属刃が跳ねたり、刃そのものが傷んでしまうからです。

「要するに、回転する刃で草を刈っていけばいいんでしょ?」

いえいえ、草刈りを侮ることなかれ。刈る方向や動かし方にちょっとしたコツがあり、それを知らないと動かしている割に全く刈れません。加えて、刈払機は燃料タンクとエンジンがついているため意外と重い。

強風が吹く中、なんとか作業を終わらせ、畑へ移動。いつものようにナスやオクラ、ピーマンに加えてメロンがたくさん実っていました。人工授粉や摘花など、メロンの苗木の説明書には手入れの方法が書かれていたのですが、基本は放任栽培。それでも意外とできた!と早速試食をしてみたところ

「……全く甘くない」

実らせるのと、おいしい実に仕立てるのは全く別物。農家の方々にはつくづく頭が下がります。
最後に夏らしいことを、と雲行きが怪しい中スイカ割りを決行。

「甘い!」

メロンの後だけに、スイカのおいしさは心に響くものがありました。

かじわら(隊長代理)

 

棚田まなび隊2017 第9回活動日

田畑の草取りと平川家住宅見学【7月23日(日)晴れ】

「平川家住宅」は、3つの茅葺屋根が並ぶ立ち姿が特徴的な民家です。上から見ると屋根がコの字型をしているため、クド造りと呼ばれています。福岡県で初めて国の重要文化財に指定されており、場所も浮羽町田篭地区と、まなび隊が活動するつづら棚田のすぐ近く。地域の農以外のことも学ぼうと、この日はいつもの草取りに加えて、みんなで民家の見学に行きました。

とはいえ、田植え以降続く草との闘いは避けては通れません。まなび隊が耕作するのは5枚、毎回15名前後の隊員が集まりますが、雑草取りと畔の草刈りには、なんだかんだ約半日かかっています。民家見学を昼食後に予定していたので、この日は「よし!」といつも以上に気合が入ります。

しかし、田んぼに到着したみんなの顔に「おや?」と戸惑いの色が浮かびます。覗き込むとほとんど水が干上がった状態になっていたのです。晴天が続き、水源となる葛篭川の水量が少ないことに加え、まなび隊の田んぼ自体にも問題がある様子。田んぼと石垣の間に隙間があり水が漏れていたり、土均しが甘く傾きが生じ水が全体にいき渡っていない、などそもそものベースが整っていなかったようです。とりあえずの応急処置を施し、あとは抜けるより多く水が入ってくれるのを願うのみです。

畑は相変わらず元気そのもの。雑草も晴天もどんと来い!といった感じでしょうか。毎度ながら逞しい限りです。今回の収穫物はトマト、ナス、インゲンマメ、トウガラシ、シシトウ、ピーマン、(育ちすぎた)オクラ、キュウリ。そして、なんとメロンも実をつけていました。人口受粉や芽摘みなどは一切していなかったので、驚きと多少の申し訳なさも感じながら、ちょきっ。いただきます。

お昼ご飯でお腹を満たし、いつもの土にまみれるのとは、ちょっと違う学びの場へ。平川家住宅では、隊員でもある民家研究の先生が解説をしてくださいました。クド造り民家について、平川家住宅の変遷について、民家の間取りについて。曰く、民家は形や様式で語られるイメージがあるのですが、実際は柔軟に暮らしや時代のなかで形や役割が変化していく、周りと共にあるものということでした。

ここで、かつてどの様な生活が営まれていたのでしょうか。軒が長いため家の中には光が多くは届かず、晴天の外とはまったく別世界のよう。屋根の裏はとても懐が深く、薄暗さの中に何かが潜んでいそうな雰囲気。
「子どもは怖かっただろうな」
お化けが出そうで、誰もいない2階に一人で行けなかった、小さい頃の記憶と重なりました。

かじわら(隊長代理)

棚田まなび隊2017 第8回活動日

畑の初収穫&サバ飯でカレーパーティー【7月10日(日)雨のち曇り】

雨天中止を一回挟み、1ヶ月ぶりの活動日となった第8回目。朝からしとしとと雨が降り続いてはいたものの、田んぼや畑の雑草や作物の生育具合が心配されたので、少雨決行となりました。各自カッパを着込んで、目立つ雑草だけを取り除きます。

この日は草取りに加えて、イノシシ対策の電柵を設置しました。
田んぼが囲われるように畦や石垣に棒を立てていき、電線が織り込まれた紐でそれらを繋ぐいでいきます。電源は太陽光発電を利用し、タイマー設定により夜だけ電流が流れる仕組みです。このとき、電柵に草が当たっていると、それを通じて電気が地面に逃げてしまうため、電気が全体に流れません。なので、電柵を張る前やその後、畔も、小まめな草刈りが必要なのです。

次は畑に向かい、野菜の収穫に取り掛かります。実は今回のメインイベントは畑の第一弾収穫祭!
とはいえ、野菜の苗を植えて約1ヶ月。雨天中止でほとんど放置状態だったため、荒れ放題で野菜も枯れているのでは……と、不安な雰囲気が隊員間に漂います。

農道を上っていき徐々に畑が見えてくると、案の定、草ぼうぼう。やっぱり厳しいかな?と思ったのも束の間、雑草の間から大きく育ったピーマンが顔をのぞかせていました。他にも、サヤインゲン、キュウリを収穫。トマトやナス、オクラはもうちょっと、といったところ。心配していたメロンもしっかりツルを伸ばし、花の蕾もできていました。土の力は偉大です。

意気揚々、気分上々、採れたての野菜とともにお昼ご飯!、といきたいところですが、ここから、もう1つメインイベント「サバ飯」への挑戦がはじまります。「サバ飯=サバイバル飯」は、アルミ缶2つを器に、牛乳パック3本を燃料とした、野外でご飯を炊く方法。気になる方は「サバ飯」で検索してみてください。
各自1合ずつお米をセットし、ひたすら燃やし続けること約30分。倒したり、火が消えたりなどのアクシデントを乗り越え、全員おこげつきのおいしい白飯を炊き上げることができました。ここから、ほんとうにお昼ご飯タイムのスタート。白米にはもちろん、ということで今年隊員として参加している無印良品さんにカレーを持参いただきました。しかも8種類!

時間はすでに2時半を回っていました。おなかはペコペコでしたが、ずらりと並ぶ、自分たちの手で作り上げた品々に、達成感はいっぱいです。

最後になりましたが、207年7月5日から6日にかけての大分県・福岡県筑後地方を襲った豪雨により被害に合われた方々・関係者の方々には、大変お悔やみを申しあげます。つづら棚田への道中に見える朝倉や杷木の風景が一変してしまっていることに言葉がでません。そして、棚田まなび隊が発足するきっかけとなった5年前の九州北部豪雨が思い出されてなりません。今回、まなび隊が活動する地域周辺には、幸いにも、特に大きな被害はでていないとのこと。今後も、常に自然と共にあることを忘れずに、私たちに今できることを精一杯向き合っていきたいと思います。

かじわら(隊長代理)